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Vol.12
10/oct 1998
31/mar 2004 mod
Problems with electronic medical records

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815_ A Computerised Decision Support System for the magagement of asthma

開発中の小児慢性疾患診療支援システム Symptomics

電子カルテの問題点を列挙したのは、当サイトの最も古い文章の一つです。1998年に記載した一連の文章を読み返し、現在開発中のシステムでは、どのように対応していったのか、もう一度考えてみることにしました。

左のスクリンキャプチャーは、投薬コンプライアンス画面です。薬による投薬期間、予想される摂取%を2年分表示するもので、特に吸入薬など、用法によって使用期間が変化するものに関しても、正しく計算する能力を持っています。この画面と、症状、治療計画、治療変更点、診断などを一目で確認できるデータマイニング画面の二つを利用すると、患児の状態を瞬間的に把握することが可能となりました。

  1. 電子カルテの問題点
    1. 既存システムからの変化
      1. 紙カルテ、伝票からコンピュータスクリーンへ
      2. メタファーの欠落、大きな変化による医師、看護師への負担
    2. マンマシンインターフェースの不備
      1. 既存システムの一例と問題点
      2. 入力メソッドしてのキーボード
      3. 液晶表示機能付きタブレットの将来性
    3. システムの持つ危険性
      1. システムダウン
      2. 新しい医療ミス、「入力ミス」
    4. 疲労の増大
      1. コンピュータ画面とにらめっこ
      2. 肩こり、腰痛との戦い
    5. 患者サービスの低下
      1. 待ち時間の増加
      2. 患児の顔を見ない医者
      3. さじ加減の消滅
  2. 電子カルテの未来
    1. どうして医者は電子カルテに反対するのか
      1. 多くの医師は電子カルテに懐疑的
      2. めんどくさがりや?
    2. 過渡期としての電子カルテのありかた
      1. それでも電子カルテは必要になる
      2. 過渡期としての電子カルテ

この色で追記してある内容が、1998年当時の記載に対して、現在開発中の小児慢性疾患診療支援システムがどのように対応したかを説明する文章です。

電子カルテの問題点

既存のシステムからの変化

紙カルテ、伝票からコンピュータスクリーンへ

電子カルテになることで既存の紙カルテからデータの移行という大きな負担が生じます。カルテの書き方に決まった方法はなく、多くの方法、図、記号が混在します。もちろん過去においては多く見られた乱筆や可読性の低い物も存在しますが、現在のいわゆる医事紛争などにおける「証拠」としての側面からも少なくなる傾向にあります。

そういった情報のファイリングという意味で、もちろん電子カルテを完全に画像イメージとして取り込むのであれば、はっきり言って現在の状況でコンピュータが紙にかなうわけはありません。

所見を記録したときのままで見せるのであれば、コンピュータ化する必要性は感じられません。所見を入力するときに、その内容を即座に要約するエンジンと、それを効果的に見せる方法を開発することで、診療録を別の切り方でみることができるようにしました。これは紙カルテでは実現できないことです。

また電子カルテの大きな側面である、保険請求業務との連携には、文章ストレージの側面だけでは語れず、当然発生源入力という要求が生じます。医療行為のコンピュータへの入力作業を医療従事者に強いるわけです。

医事システムとは完全に切り離した「診療支援システム」としての位置づけは、入力の煩雑さを軽減しています。

メタファーの欠落、大きな変化による医師、看護師への負担

医療行為の入力には、細かい分類作業、入力までのシステマチックなメニューシステムが必要になります。オーダリングシステムのプログラマは腕の見せ所となるでしょう。

しかし、実際の事例としてこれまで2種類のオーダリングシステムを経験しましたが、どちらもコンピュータのプログラムとしては確かに常識的な物かもしれませんが、医療現場からみれば、全く異質で、これまでのやり方、経験を生かせない物ばかりだったのです。

そこには明確な「メタファー」の欠落があるといえるでしょう。メタファーすなわち比喩とは、たとえば検査オーダー画面が、これまでの伝票と類似性があるのか、ないのか。画面の色、配置などがこれまでなれている伝票類と全然違うと、それだけで使用者はストレスとなります。

確かに「慣れて下さい」「熟練すればこれまでも早くなります」。それはそうかもしれません。しかし、その変化を減らすのがプログラムデザイナーの腕の見せ所ではないでしょうか。

書式としてしっかり確立した伝票類は、そのデザイン、記載量、記載方法そのものが業務を考えて作られています。そのデザインをそのまま利用することは、理にかなっていることといえます。Symptomicsでも入院治療計画書など、既存の書類のデザインをそのまま取り入れた入力画面を用意しています。しかし、カルテ本文に関しては、もともとが罫線しかない白紙です。その部分には独自のインターフェースを用意しました。結果的には見せる内容を十分考えた上で、合理的なデザインが優れていると言う結論に達しました。

マン・マシンインターフェースの不備

既存システムの一例と問題点セット処方を出すのに、マウスを6回クリックしなければ選択できない。まるで家で電話をかけるときに、隣の部屋のタンスのなかのコートの内ポケットから携帯を取り出し、暗唱キーを入力した後で短縮ダイヤルをするような、回りくどさがあります。「そんなシステムは改良すればいいではないか」そんな声が聞こえてきそうです。実際、乳児の飲むミルクの量をコンピュータに入力できるように要請したら、百数十万円の請求をされてしまった経緯があります。

セット処方には処方>新規選択>セット>(投与量調整)>投与日数の4クリック、前回処方時は処方>前回処方選択(カテゴリー別に過去3回までの処方が選択可能)の2クリックで処方可能にしました。これには用法容量の自動提示機能を持たせることで実現しています。

入力メソッドしてのキーボード。マウス

診察室の狭い机の上に、キーボード、マウスが加わりました。キーボードは雑菌の繁殖場所に最高でしょう。掃除もしにくい。あまり医療現場には向いていません。小児科医は聴診器と、懐中電灯と舌圧子だけ握って、冬の流感を乗り切ります。廊下で診察をする事すらあるような修羅場です。でもこれからは端末があいていないので診察できないと待たせるのでしょうか?

状況に合わせて入力精度をかえても、全体として成立するインターフェースを用意しています。例えば症状コードだけしか入力できない場合はマウス操作のみ、そして症状の細かい記載を行う場合は、キーボードも併用する。どちらの場合も全体を把握する場合は問題が起きないように設計しています。また、無線LANとポータブル端末を用意し、診療室のどこでも即座に記載、閲覧ができるようにしました。

液晶表示機能付きタブレットの将来性

最近ある程度の解像度を持った液晶画面と組み合わせたタブレットが製品化されています。紙カルテの自由な表記に対応できる可能性のあるのはこういったメソッドではないでしょうか。

タブレット型パソコンも実現しています。ただ、マルチプラットフォームという観点から、まだ実際に使用するにはいたっていません。

システムのもつ危険性

システムダウン

処方、検査オーダーが電子化した場合システムダウンの危険性を常に念頭に置く必要があります。これまで通り伝票に切り替えればよい、とおしゃる方も多いと思います。コンピュータの苦手な医者の中にはバッチ処理中でコンピュータが止まっている時間帯の方が手際がよくなると歓迎する人もいるぐらいです。

しかし、一旦動き出したシステムが「落ちる」とパニックに近い状態は当然予測されます。昨日やった検査結果を見ることができない、次回の診療予約がとれない、落ちる直前に出した検査オーダーが届いた、届かないで一悶着、容易にあこりえるのです。

稼働してほんの2ヶ月間で2日間も長期にわたり外来診療中にシステムダウンを経験しました。

サーバー/クライアントシステムを構築し、診療結果を紙ベースで印刷、保存することでシステムダウンに対応しています。また、端末を二重、三重にすることで、ダウンタイムを最小限にしました。

新しい医療ミス、「入力ミス」

これまでも、当然「書き間違い」や「エンボスの打ち間違い」など同様のミスはありました。コンピュータになったからといって、これらが減るかといえば減らないでしょう。逆にオーダーに人が介在することが減少した分、チェックは遅れ、「きれいな活字」の持つ魔力か、印刷物は正しいという先入観かは分かりませんが、手書きよりも間違いがまかり通ってします印象があります。

画面デザインの統一、画面の一部に個人とその時の診療内容を識別する情報の断片、たとえば処置や病名など、を配置することで、画面切り替え時でも、人違いを防ぐ設計にしました。

疲労の増大

コンピュータ画面とにらめっこあさから何十人という患者さんの診察を続け、昼ご飯もままならず診療続けていくうえに、コンピュータの画面を長時間見続けることになります。疲労は確実に増加したといえるでしょう。

肩凝り、腰痛との戦い

画面、キーボード、マウスと決まった姿勢を強いるコンピュータに、画面凝視という眼精疲労が重なります。連続30時間以上も診療を続ける病院勤務で、深夜に紙詰まりのプリンターの世話をする姿を想像して下さい。

患者サービスの低下

待ち時間の増加

コンピュータになるのだからなんでも速くなる。それは幻影です。コンピュータ操作に慣れる、慣れないの問題以前に「診察」以外の仕事が増えるのだから仕方がありません。

オーダリングシステム、電子カルテの生い立ちは医事会計システムの省力化、発生源入力による保険業務の自動化が根本にあります。

これまで、医師以外の事務職や、医師が診療時間以外にこつこつ行っていた業務を診療と同時に行うわけですから、当然ひとり当たりの時間がかかるわけです。それはそのまま効率の低下を引き起こし待ち時間の増加につながるのではないでしょうか。

待ち時間は減りません。しかし、患者情報の把握時間を劇的に短縮することはできました。待ち時間が減らないのは、診療の質が向上したからです。ようするにシステムが「治療方針の計画、変更や、立案を医師に促す」ためです。これまで、安定している場合、ともすると平坦な診療になりがちであったものが、安定しているからこそ熟考するものにかわりました。

また、待ち時間を有効に利用できるシステムを開発しました。治療方針や計画と連動した問診システムが、事前検査のリマインドも兼ね、医師だけではなく看護師、コメディカルを患者中心に有効活用します。きめの細かい医療の提供が可能となりました。

患児の顔を見ない医者

小児科という診療科は、もっともコンピュータに向いていないのではないでしょうか。急性疾患がそのほとんどを占めるため、いわゆる「Do処方」といわれる、前回と同じ処方というのは少ないためいちいち入力し直さなければなりません。

さらに、体重によって処方量が変わるため、薬剤の選択だけでなく量の入力もしなくてはなりません。一人一人が新患みたいなものです。

コンピュータの画面と向かい、入力に苦労していると、診察の時間はさらに短くなり、処方箋の印刷に苛々し、「あと、ここが赤くなっているんですけど」と印刷待ちの間にいわれた追加処方には「ごめんなさい、こんどね」といって誤魔化したりと大変な苦労を強いられます。

ふと気がつくと、あれどんな顔してたかな、と顔すらおもいだせない始末です。

効率の良いインターフェース。バーコード型問診表に連動した体格情報の獲得と、提案型処方支援プログラムの実装で、瞬時に処方を作成できます。2年間の経過を1秒で把握できる画面を利用すると、カルテをぺらぺらめくるひつようも有りません。2年間の投薬状況を一瞥できるため、処方忘れも心配いりません。

さじ加減の消滅

一つ一つの処方を一行一行入力していく負担は大きすぎるため、入力の省力化のためにセット処方を作り、少しでも迅速にオーダーするように工夫します。

しかし、セット処方には落とし穴があり、これまでの細かいさじ加減が減ってしまうことは確かでしょう。

この症状にはこの薬は止めて置こう、この薬を足そうと手書きだったらやっていたバラエティが、セットの中から選んで、消去法で変える程度になり、前の子供と次の子供の薬がそっくりなんてこともいくらでもあるようになってしまいました。

電子カルテの未来

どうして医者は電子カルテに反対するのか

多くの医師は電子カルテに懐疑的

電子カルテについて、両手を上げて歓迎する医者は少ないと思います。これまで数十人の医師に電子カルテや、オーダリングシステムに関しての意見を聞いたところ、「賛成」意見を述べたのはごく一部の医師に過ぎません。

私も現状の電子カルテには懐疑的であるといわざるおえません。その理由は電子カルテの問題点の部分で触れました。

もちろん、電子カルテを推進する先生もいます。特に日本ネクストユーザー会の代表である、大橋医院の大橋先生はその一人であり、その実績はすばらしいものがあります。

1998年と2004年では状況も大きく変わりました。電子カルテの導入は着々と広がっています。しかし、多くの電子カルテは満足のできるものでは有りませんでした。だから、支援システムを開発しているのです。

めんどくさがりや?

日経メディカルの記事に「電子カルテ化でこれまでよりもより細かいカルテ表記が要求され、一部の医師においてそれが負担になるため、反対されることがある」ととれる表記がありました。

これについては同雑誌の翌月号に、読者投稿として反論がありました。それは、カルテという物は医師にとって診療録であり、備忘録であり、医事紛争時には証拠として身を守る大切な物であり、めんどくさいからカルテを書かない医者がいるととれる表記はいかがな物か、といった内容でした。

これはまさにその通りであり、柔軟な入力を受付、それをコンピュータの情報としてきちんと、分類、利用できるシステムが要求されるでしょう。

過渡期としての電子カルテのありかた

それでも電子カルテは必要になる

会社にコンピュータが導入されペーパーレス時代がくるともてはやされ、実際は山のようなコピー紙が浪費され、話が違うではないかと批判された時代もありました。しかし、電子メール、電子決済を代表とする情報化は着実に進行し、現在のオフィスからコンピュータを撤去したら、大変なことになるでしょう。

このような時代に医療現場では複写伝票が生き残り、多量のデータを人海戦術で糊付けし、多くの人手を介して伝票をコンピュータに入力しているのです。

昨今の医療保険改正により、病院経営は着実に難しくなり、より一層の経営努力をしなければならない時代になりました。また、患者サービスの一環としてより高度で、迅速な医療を実行するための電子化は必要でしょう。

「電子カルテなどナンセンスである」と医師が一人でがんばっても時代に取り残されるだけです。

過渡期としての電子カルテ

電子カルテ、もしくはそれの前段階とも言えるオーダリングシステムはどうあるべきか。現状のシステムのいろいろな不具合を述べてきましたが、総合すると「過渡期としての電子カルテ」という立場をとって欲しいということです。

新しいインターフェースを作るのも大切かもしれません。しかしその前に、既存の流れからシームレスに移行できるようなインターフェースを用意するというのはいかがなものでしょうか。私はそこに過渡期としての電子カルテの突破口があるように思います。

現在も「過渡期」と言えるでしょう。しかし、状況はかわりつつ有ります。他が導入してよいものを選べばよい。という考え方も有るかもしれません。しかし、標準化されたものに医療自体をあわせていくしかないでしょう。もし、いま行っている医療を、標準として組み込んでいきたいと思うなら、電子化に今、参加しなければならないでしょう。

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Written/Edited by Y.Yamamoto M.D.

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